便利なモノ(1)

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レジに戻ると、そこには面倒そうな表情で雑誌を読んでいる店長がいた。お客様がいないからいいものの、手入れのされていない無精ひげやだらしなく着崩した制服には文句をぶつけたくなる。 「あぁ、お疲れ。いやぁ、人気店ってのも大変だねぇ。数か月前は閑古鳥が鳴いてたっていうのに、最近じゃ機械が埋まる勢いで押し寄せてるじゃない。こりゃもっと増設して利益を狙うのも悪くないかな」 「機械を増やす前に従業員を増やしてください。お客様の対応が増えれば増えるほど私の負担が大きくなります」 「そんなに怒んないでよ。ほら、仕事はやりがいだって言うだろ? さっきの客が選んだのって君の新作だし、自分が組み上げたプログラムのシリーズが人気になって嬉しいとかないの?」 するりするりと私の怒りをかわし、羽みたく軽い言葉をかけてくる店長にはもう呆れてため息が出る。 「元々、私はプログラマーの仕事だけをするつもりで就職したんです。お客様の対応なんてアルバイトにでもやらせればいいじゃないですか」 「そうは言うけど、脳に作用する機械だからその管理者ってなると君みたいな専門家とか面倒な資格をクリアした人材じゃないとダメでさぁ。求人募集もいいの来ないし……」 「従業員の私にぼかやれても困ります。経営者であるあなたの問題の解法をこちらに求めないでください」 声を低くして詰め寄っても、店長はへらへらとにやけた顔をそのままにして、何も言わずに事務所へと戻っていった。人格に難のあるやつだとは思っていたけれど、この店の経営がうまくいくにつれ、その態度は余計にひどくなっているような気がする。 心のうちにたまった憤りを外に出すように、長く、長く息を吐く。解消の困難な怒りを抱えることほど厄介なことはない。今は意識を切り替えて、勤務時間の終了まで店員としての私を演じることに集中しよう。
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