それは初日の夜……

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 僕がそのマンションに決めたのは、とにかく安かったからだ。  JRの駅から五分ほどの距離だったし、あんまり安いと怖い――とか聞くが、やっぱり安さには勝てなかった。  念のため、ハウスショップの担当者にそれとなく訊いたが、違和感はなかった。  だいたい荷物の整理を終えてから、夕食をコンビニ弁当で済ませ、時計を見ると午後十時だったので、とりあえず練ることにした。  が、その時、 『タクヤ?』  という声を聞き、思わず振り向いた。若い女性のような声だった。  しかし、そこには誰もいなかった。  部屋中、見回したが、ゴキブリ一匹いなかった。  第一、僕の名前は「タクヤ」ではなく「ツトム」なのだ。 「空耳かな……」  僕はとにかく寝る準備をつづけようとした。  すると、また、 『タクヤ?』  今度は天井の方から聞こえた。僕は少々頭にきて、 「僕は、ツトムだよ!」
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