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『セシル、そんなことを言ってはいけない』 『あら、ごめんなさい。それよりもあなたのほうは大丈夫なの? 帰国が知られて動きが監視されているんじゃ……』 『そのことだけれど、俺はこれから奴らの誘いに乗ってみようと思う。だから、こちらからはしばらく連絡はできない』 『……わかったわ、ベイン博士には伝えておく。でもタカヤ、あまり無茶はしないで』  長く通話をするのは危険だ。ありがとう、と短く言って話を終わろうとして、稜弥は昼間のことを思い出した。 『君のくれた発情抑止剤の経皮滲透パッチ、あれはやはり二の腕じゃ効きが弱い。それにカプセルも噛み砕いたら、中身がこの世の物とも思えない味だった』 『もうカプセルを使ったの? よほどフェロモンの強いオメガがいたのね。味は何とかしてみる。そうだわ、いっそのことタカヤの運命の人が大好きなチョコミント味にしてあげる』  クスクスと笑い声がスマートフォンから響いてくる。そして通話を切る直前に彼女は『それからパッチは精巣に近いところ、陰嚢に貼るのが一番よ』と、親切なアドバイスを稜弥にくれた。 「チョコミントは味が苦手なんだけどな」  通話の終わったスマートフォンの画面を見つめて独り呟くと、稜弥は通信履歴を削除した。
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