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「酷いこと言うなあ」 「……あの人はオメガじゃない」 「なるほどね。中途半端なゼロ世代の俺と違って、第一世代の稜弥くんは七瀬先生に対して何も感じなかったというわけだ」  目論見違いかあ、と残念そうに島田が大きなため息をついた。 「もう無駄な話はいいだろう。なにかあったら報告するし、どうせお前も営業マンの振りをして研究室に来るんだろ」 「ニセモノとは言え俺はこれでもトクシゲ化学薬品のトップセールスマンよ? でも今は東條先生の目がサーチライトみたいに光ってるから、研究室に行くのはちょっと時間を置いてるのさ。まあ、また今度ゆっくり話をしようよ。君のこと、うちのボスも今回の件が終わったら、ぜひ我が社で働いてもらいたいって言ってるよ」 「いらない。お前たちとは金輪際、関わりたくはない」  ははは、と空々しい笑い声がスマートフォンから聴こえて、稜弥は思わず耳を離してしまった。その勢いで通話を切ろうとした稜弥に向かって、島田が最後に話しかけてきた。 「そうそう、奥様も恵梨香ちゃんも元気だから安心して」 「! 会ったのかっ、どこにいるんだ!?」 「それは教えられないなあ。君の嫌いなオトウサマに訊ねてみたら?」  含み笑いを残して島田が通話を切った。 (母さん……、恵梨香……!)  ブラックアウトした液晶画面を見つめて、稜弥はギリギリと奥歯を噛み締めた。
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