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「何言ってるんだ。陽子が入院したぐらいで車に乗るなって……俺を馬鹿にしているのか!」
バン、と義父が持っていた杖を床に叩きつける。
その衝撃に怯みながらも、普段は見せることのない厳しい顔をした夫が口を開いた。
「妻が父さんの足になってくれるって言ってる。母さんの入院で大変な時に、父さんまで事故を起こしたら……」
「ガタガタ言いやがって。ふざけるのも大概にしろ!」
「お義父さん、お願いします。私がどこにでも連れていきますから」
「うるさい! ワシを年寄り扱いするな!」
「危ない……!」
杖が私の頭に振り下ろされそうになったのを、寸前のところで夫が掴み上げた。
身体の力が抜け、ヘタリと地べたに座り込んだ私を見下ろす義父。
その濁った瞳には、もう私の姿は映っていない。
目の前で乱暴に扉が閉まり、今回もまた、交渉が決裂する。
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