3人が本棚に入れています
本棚に追加
義母が人間ドックで引っかかり、検査入院をしている今、義父まで事故を起こしたら……。
義母の介護のため、長年続けていた仕事を辞めた私。
単身赴任の夫は月に一度しか帰って来ない。
「父さんのことは任せたよ」
「ええ、行ってらっしゃい」
夫が赴任先の東京へと戻る朝。義父と折り合いの悪い夫は、義父の身の回りの世話を私に任せて車に乗り込んだ。
静かに遠ざかっていく車を眺めながら、身を刺す寒さにぶるり、と肩を震わせる。
夜明け前の空一面が、深い藍色に染まっていた。
「ブルーモーメントって言うんだよ」と、柔らかな笑顔を浮かべた、若き日の夫が教えてくれたっけ。
雲がほとんどない、澄んだ空気の日だけに見ることの出来る現象。
その美しさに心を奪われながらも、奥底に溜まった澱のようなものが消えない。
最初のコメントを投稿しよう!