プロローグ

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部屋から出ようと彼に背を向けたその時、背後から聞こえたアラーム音に身体が飛び上がりそうになり 「ヒッ …」 と小さな息が漏れた。 咄嗟に両手で口を押さえようとした私の手からストッキングが滑り落ち、ガシャッというナイロンの音が響いた。 固まった私の背後にあるベッドから聞こえたシーツの擦れる音に“ あぁ、見つかってしまった … ” と覚悟を決めるしかなかった。 暑くもないのに、背中を嫌な汗が流れ落ちる。 おそらく寝返りを打ち、こちら側を向いているその人と目を合わせる勇気なんてあるはずもなく、とても振り返る事なんて出来なかった。 アラームもいつの間にか止まっていた。
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