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「ドーン! ドドーン! ウー! ウウウー!」
流石に早朝花火はまずいよね。そりゃ警察呼ばれますよ。あぁ、近くだ。靄の中に、赤い光が点滅してる。ちょっと火がメラメラしてるね。嫌だぁ火事とか。もう最悪。早く家に帰って寝よう。
「ぐぅ」
もうっお腹の音、大き過ぎ。イケメン店員に聞かれたらどうするの。そう言えば、店員も、あれ、レジに誰も居ないじゃない。休憩中かな。とりあえず、サンドウィッチでも買って、直ぐに帰るっ。
「プィ~プォォ~ン」
なんだ、この間延びした呼び鈴。
ぬおって、出てきたイケメン! カウンターの下に居たの? どんな休憩ですか?
「ン、うぉ、ぐっ、ン、がぁ?」
「あ、ええ、こ、これで」
寝起きなのかな? 全然声が張れてないよ、目も虚ろだし、なんか顔色真っ青だし。
「ゴッ、が、ん」「ピッ」「グ、ごあ」「ピッ」「ン、ぎごが、ゲ」「ピッ」
ダルそうでも、やる事はやるのね。見た目もイケメンだけど、仕事もできる、いい男だわ。なんだか、その気怠さも、アーティストっぽくてカッコいいかも。髪サラサラだし、身長高いし、鼻高いし。
あっ! 嫌だ。私、今の恰好! こんなの、こんな姿で、平気で買い物してる。小学十四年生の花子さんで、彼より眼の下のクマが濃い顔で、せめて、せめて、普段くらいの肌の調子なら。でも、ダメか。そもそも、ただの通りすがりのお客さん。アイドルみたいに可愛くないし、ピチピチ、ワキャキャなんて感じもないし。
「アあ、ああぁぁーぁ」
「うぇぇ!」
いきなり大接近。千円札じゃダメだったの?
「わ、ちょ、ちょっと待ってくださいよ、小銭にします。十円ありますよ、あっ無かった。カード、カード払いで」
「グ、モォォ」
カウンターから出てきちゃダメでしょ。それは、ルール違反ですよ。仕切られたカウンター越しの恋がいいんでしょうがっ。あ、やめ、止めて。
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