2人が本棚に入れています
本棚に追加
ミーーーンミーーーーンミーーーーン
ここ数日、すっかり夏らしくなり、今日もベランダに忍び込んだ蝉の声で目が覚める。
「…う、うるさい。」
寝ぼけながらも、目を開けて時計を確認する。
「…あれ?」
目をこすり、もう一度目を凝らす。
「…8時?」
朝のHRが始まるのは、8時30分からだ。
…終わった。
家から学校までは、自転車で約20分程かかる。
俺は、ベッドから飛び起きて、制服に着替える。
顔を洗い、リビングに置いてあったバナナを右手に、スクールバッグを左手に握りしめ、慌ただしくローファーを履く。
ここまでで5分経過。
「いってきます!!!」
いつもはまだ親が家にいるのだが、今日は仕事か何かの用事でいないようだった。
俺はバナナを頬張りながら、自転車で学校に向かう。
ここ、水森市は、「ど」が付くほどの「ど田舎」で、この時間はまだ車もそうそう走っていない。
右を見れば田んぼ。
左を見れば森。
コンビニなんてここから自転車で1時間もかかる。
とても小さな市で、俺の通う水森高校(みなもりこうこう)は、一年生が8人、二年生が12人、俺がいる三年生は13人という、 少人数高校だ。
そして、今日は7月14日、高校生活最後の夏休み前の終業式。
俺にとって最高の夏休みが待っているというのに、遅刻なんてできない。
「おい!夏目!遅刻になるぞ!」
校門を入ると、3階のベランダから幼馴染のマル(丸山修平) が叫んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!