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腕時計に目をやるとチャイムまであ2分。
校門に入るとすぐ学校というわけではなく、まだ少し坂道が残っている。
…やばい!
終業式くらい遅刻するなよ、と昨日、担任の谷(たに)が言ってたのを思い出す。
「夏目!あと二分!!」
マルの隣の渚(なぎさ)も叫ぶ。
「わ、わかってるよ!!!」
俺は慌てて教室に向かって走り出した。
こういう時、教室が1階にあったらなぁと思う。
__________バンッ!
勢いよく教室の扉を開けると同時に、朝のチャイムが鳴る。
「っしゃーーーー!セーフ!!」
俺は扉の前で大きくガッツポーズをした。
「いいから早く席座れ!」
谷は呆れた顔で言った。
「お前はーー、いっつもギリギリだな!
そんなんでほんとに社会人になれるのか…。」
谷のお説教タイムが始まった。
クラスメイトは、やれやれ…といった顔だ。
優子(ゆうこ)が小声で「早く…。」と言いながら、
俺に席に座るように手招きをした。
谷が自分の世界に入り、ブツブツ言っていると、学校一の優等生であり、俺の幼馴染のメガネ(松木一馬) が
「先生、朝のHR始めましょう?」
と優しく言った。
谷は、メガネに言われ、ハッとしたようにHRを始めた。
一通り点呼を終えると、谷は一息ついて言った。
「えーー、もしもこれからお前らに悲しい出来事、辛い出来事が突然降りかかったりするかもしれない。だから、えーーーつまり………」
「え?なんだよ。何が言いたいんだ?」
マルが首をかしげる。
「そんな時は、いつでも俺を頼って欲しい。俺は、ただの先生だと思って欲しくない。俺にとってお前らは、息子、娘のような存在だ。」
まっすぐと前を見る谷。
「なに、いきなり。気持ちわるっ。」
渚の言葉に、みんなが笑う。
今日も、教室は平和に時間が過ぎていて、
全開に開けた窓からは、心地いい夏の風が吹いていた。
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