奇像《アイドル》

ユウキ

俺（カツヤ）の、中学生までの友人の一人に「ユウキ」と言う奴がいた。特に忘れたつもりは無いが、ある理由から彼の名前を出す事には憚(はばか)られる事情があるので、極力名前を出すのを控えていたせいもある。

しかし、彼の名前を強くイメージさせて止まない近頃を俺は過ごしている。とは言え、俺も既に社会人となった今、どうして彼の事を思い出したのかを語らねばならないだろう。

俺はごく平凡な家庭に生まれて、特筆すべき特技は持っていない。大学を卒業はしていても、周りからすれば珍しい事でもない。

社会人になってみれば、俺のような人物を探せばごまんといるワケで……だから、多少のサッカー経験があっても日本代表を応援する時にアツくなれるだけで、それ以上でもそれ以下でも無い。

強(し)いて言えば「俺が選ぶ日本代表メンバー」で、同じくサッカーに興味のある職場の人と有意義な時間を共有出来る程度であって、ただのサポーターの一人だ。