メモリアル･キャンドル

｢マッチかライター、あったっけ？｣

航は私の妊娠をきっかけに禁煙して早18年。
ライター、どこにあったっけ…｡
あ、そうそう。夏に使ったわね。

｢蚊取り線香の缶の中だわ。
食器棚の上の箱にまとめて入れてあるの｣

了解、と椅子を寄せてささっとライターを見つけると、航はキャンドルに火を灯した。

ぽぅっ、と朱色の炎が辺りをほんのりと照らす。

｢綺麗だね……｣

ぽつりと呟く私を、航はじっと眺めていた。

｢……何？｣

何も言わず、ただ私を見つめて何か考えこんでいるらしい。

｢コーヒー、飲む？｣

｢………｣

無言。

やれやれと肩を竦めて溜め息一つ、淹れるコーヒーは二つ。