「結婚してください」「嫌です」

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ひとしきり眺めたあと俺は奴に聞いた。 「で?何か言いたいことがあんの?」 「うん。ねえ、ミニマムな暮らしって知ってる?」 「は?」 何だいきなり。そんなもん知るか 「無駄なものを置かないで、シンプルに生活することだよ」 「それは物が買えなくてガランとしてるこの家のことか」 「買えないじゃなくて買わないんだよ。こだわりを分かって欲しいなあ」 ププ。そこがこだわりか。 「分かった。そこは訂正する。ほかには何かあるか」 「いやあ、分かってないと思うな。俺、同じ服を何着も持ってるよ」 「は?何で」 「服っていうのは、組み合わせを考えるから時間のロスになるし、それがストレスにもなるんだよ。だったらいっそ清潔な服を同じ組み合わせで着回しましょう、って話。ずーっと同じ服着てたように見えたかもだけど、いつもいい匂いしてた筈だよ。ちゃんと着替えてたもん」 「はぁ。そうなんだ」 「因みに白シャツは全部シルクの一流品」 「シルク?高いじゃねえか、バカか。一体どこにこだわってんだよ」 全然知らなかった。いつも同じ服だと思ってた。 「それとね」 「まだあるのか」 「僕、ホストしたことないよ」     
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