「結婚してください」「嫌です」

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「笑い事じゃねえ。もう俺、嫌になって、一生独りでいようって思ってたんだ。それを親も知ってたから、お前が俺を無一文だと勘違いしてても愛してくれてるのが分かって、俺がやっと幸せになれるっておいおい泣いちゃって」 マジか。俺の知らないところで感動秘話が出来上がっていやがる。ハードルが上がり過ぎてるぞ。こいつの両親に会うの怖ええ。 「地位と金目当てだったけど、俺ホントもててたのね。だから、結婚してください、幸せにして下さいは飽きるほど言われたけど、幸せにしてやるは初めて言われたよ。凄く嬉しい。それに、あいつらの愛は偽物だけど、お前の愛だけは本物だって信じられる。だって何にもない俺を選んでくれたから。お前が結婚してくれて、本当に幸せだ。大好き。愛してる」 カアアッ 真正面から満面の笑みで言われて、顔から火が出るほど真っ赤になった。 結局俺も、こいつが大好きで、何者でも構わないんだ。 ただ、好きなだけなんだ。 「実は俺こそがお前と結婚できてラッキーだったんだな」 「そうでしょう?もっと俺を敬って」 「今ので一気にありがたみが失せた」 「酷い!」 そうだった。金持ちだろうがなんだろうが、俺にとってこいつは何も変わらない。 「奥さんも晴れて大金持ちの仲間入りだから、好きなもの買いなよ。何なら家政婦さん雇う?」 「何もいらねーし、家事はお前が手伝え。無駄遣いすんな」 「欲がないねえ。俺、家事やだ」 文句言ってるくせに嬉しそうだ。     
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