59人が本棚に入れています
本棚に追加
願わくば間違いであって欲しかった。
こんな時だけ勘のいい自分を恨んだ。
そして
そのまま気配が消えるのを
僕は祈って待っていた。
だけど――。
「もう……いいんだ」
誰かさんの方は
もう隠れる気はないらしい。
「おいっ……!」
僕のアイマスクを掴む手を
阻んだのは由莉だった。
誰に対する優しさだろうか。
僕かそれとも――。
「本人がいいと言うんだ」
結局
冬馬が手を伸ばし僕のアイマスクを持ち上げた。
それでもまだ
僕はギュッと目を閉じていた。
「汐里――」
真実を知るのが怖かったから。
最初のコメントを投稿しよう!