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「おめぇはよー」
はーっとため息が零れる。
「俺の心配なんてしてていいのかよ」
「え?」
ぐい、とその折れてしまいそうな腕を掴んで、己の方に引く。
「……俺が、悪い人だったら、どーすんだよ?」
「?」
「ほら、よ」
すとん、と音でも立てそうなほど簡単に。
璃桜は、俺の腕の中におさまる。
呆気なく触れることのできた璃桜の矮躯に、どくんと心臓が音を立てる。
今まで近づいた誰よりも。
璃桜は、綺麗で美しかった。
その何の汚れもない、柔らかくて白い首筋に腕を回す。
「どうすんだ?これで、俺が締め付けたら?」
「……としぞう」
そっと、俺の頬に両手をあてる。
酷く、悲しそうな顔で。
「りおはね、知っているのよ」
視線が、間近で交錯する。
「……なにを、」
どくん、自身の身体が脈を打つ。
まるで、きいたら、後戻りはできないと、警告をしているように。
だけど。
璃桜は、純真無垢な瞳で、穢れのない唇から、真実を紡ぐ。
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