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「……としぞうは、悪いことがすきなんじゃなくて、悪くみせることがすきなの」
―――そうやってね、悪いひとになりきっているの。
琥珀色の瞳で。
じっと、俺の瞳を見つめながら。
そう、言いきった。
「――――っ」
心を、裸に、される?
心の殻が、砕ける?割れる?崩れる?壊れる?
丸裸になっていく自分に、酷く。
恐ろしく、なった。
望んでいたことが叶いそうになると、人はこんなにも畏怖を憶えるのか?
「としぞ?」
「っ、なんでもねぇ」
間近から見上げてくる綺麗な瞳に耐えられず、視線を外して腕から解放した。
「きょうはお家かえる?」
「……あー、そうすっか」
これ以上、璃桜の傍にいたら、自分は如何なってしまうのだろう。
それが、自分でも、馬鹿馬鹿しいほどに、
――――怖くて。
意図して河原に向かうのを、やめた。
そして、実家の行商を手伝い始めた。何か、熱中することが必要だった。
何も、考えなくてよいような。
それは傍から見れば、やっと改心した末っ子が、今までのことを悔いるように見えただろう。
実際は、―――言わずもがな、だろう?
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