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「……っ、くく、……」
笑いながら、涙が流れる。
透明に瞼を超えてじわり溢れてくる感情が、心を洗い流す。
「おにーちゃん、なんで笑うの!?」
「……歳三」
「とし、ぞ?」
「そう、俺の名は、歳三だ」
「としぞう、としぞう」
喜んで俺の名を呼ぶ璃桜に、また笑いが込み上げる。
いや、俺、何してんだこんなところで。
笑いの隙間で、ふと我に返った時に、そういえば落ち込んでいたんだと思い出す。
家に帰りたくねぇなぁ、と思考が流れていきそうになる。
思案顔になった俺に気が付いたのか、それともただの偶然なのか。
それはもう誰もわからないけれど、璃桜は唇を広げて、俺に向かって変顔を繰り出す。
「とーしぞー」
「……何だおめぇ」
かと思えば、ばっと己の顔から手を放し、にまりと笑って。
「りお!」
「……ぶっ」
………ちょっとは、俺のこと落ち込ませてくれよ。
ひたすらに調子を狂わせる璃桜と一緒にいると、暗い気持ちがどこかに消え去っていくことに気が付いた。
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