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僕が中学二年生になってすぐ、また達也を見かけた。
家の近所だった。
前方から「よお!」と、全開の笑顔で声をかけてきた達也。制服は学ランからスーツみたいなブレザーに変わっていた。そのせいか、以前よりもっと大人っぽく見えたけど、懐かしい笑顔はそのまま変わらない。
僕は手を少しだけ上げて挨拶した。
「昨日発売したばっかのゲームあるから遊びに来るか?」
そう誘われ、久しぶりに達也の家に行くことにした。
達也の部屋は二階で、小学生の頃は友達みんなでよく遊びにおしかけていた。部屋はあの頃よりもちょっとだけ落ち着いた感じになっていた。おもちゃや、賞状もなくなっていて壁にはオシャレなポスターが貼ってあった。
さすが高校生だなと思いつつ懐かしい感覚を思い出す。
しばらく一緒にゲームをして遊んだ。
お互い違う制服だったけど、まるであの頃に帰ったみたいだと思った。
気付けば日も暮れ、窓から見える景色が茜色に染まり、電気を点けていない部屋の中はどんどん薄暗くなっていく。画面だけが煌々と光ってて、気がついたら目がしょぼしょぼしてた。
キリのいいところでゲームを止め、コントローラーを置くと指先で両目をマッサージする。
「ジュース飲めよ」
「うん」
薄暗い部屋でベッドにもたれジュースを飲みながら「部活なにやってんの?」とか、どうでもいいお喋りをしていた。でも達也の口数がだんだん減っていく。なにか様子がおかしいと思っていたら、突然手を握られた。
僕は握られた手を見て、達也を見た。
達也は真剣な表情で俺を見てた。空気がやたらと重い。どんどん近づいてくる達也の顔。
「……達っちゃん?」
久しぶりにその名を呼ぶ。
多分怖かったんだ。小学生の時のように呼べば、この空気が変わるんじゃないかって期待した。
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