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今年行われるメロン品評会で、どちらがより美味いメロンに選ばれるか。金賞でも、銀賞でもいい。相手より美味いメロンを作った方が勝ち。負けた方は、勝った方の言うことを聞かないといけない。要するに、罰ゲームだ。
この妙な賭けはこの新年会では恒例で、去年は別の二人が賭けをして、負けた方は夏祭りの時に女物の下着、上下セットまでつけ女装する羽目になった。
飲み過ぎの席での個人的な約束だけど、ただの戯れ事では済まされない。恒例だからっていうのもあるけど、それだけじゃない。互いに自分の作ってる物にプライドを持っているから本気になってしまうのだ。
「絶対負けない。糖度も香りも十分ある。賞はウチが貰う」
俺が言い返すと、達也が嬉しそうに俺の背中をバンバンと叩いて言った。
「自信満々だな。そうこなくっちゃ」
それから嫌な笑い方をして付け加える。
「……俺も負ける気はしねぇけどな」
集まったJA職員や、近所の飲食店や土産物屋で働く人たちに混ざり、高級料亭の女将や料理人がいた。舌が超えた人たちだ。それぞれみなクジを引き、一から十までの番号のついている人間が手を上げる。とうとう十人の審査員が選ばれた。
テーブルに用意されたメロンは十皿。全部一口大にカットしてあり、どれがどの農家のメロンかは外見ではまったく分からない。皿の横には番号札があるだけ。
皆、手に紙とボールペンを持ち、メロンを口に含んでは点数を付けていく。
「いよいよだな」
俺はゴクリと唾液を飲み込んだ。大丈夫、糖度は特秀品の13。網目だって細かく均等でしっかり盛り上がってる。五点満点を取る自信は多大にあるんだ。
隣に立っている達也が俺の耳元へ顔を寄せた。
「……俺が勝ったら、お前には俺の女になってもらう」
「はぁっ!?」
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