第一話 メロン王子

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 翌日、ビニールハウスで仕事をしていると、入口に軽トラが止まった。軽トラの横っ腹には名波メロンの文字。  なんなんだよ、うちにまで押しかけてくるなんて。  俺は無視して鋏を手に収穫作業を続けた。辺りの目ぼしいメロンの収穫をし、立ち上がった途端、後ろから腰にグイと腕が回り引き寄せられる。 「うわっ」 「よ、おつかれ」  振り返るともちろん達也だ。視線を外し、鋏を持っていない手で腰に回された腕を引き剥がそうとしたけど、太い腕はビクともしない。 「何の用だよ」  顔だけ振り向いて文句を言うと、達也が目の横にチュッとキスしてきた。 「ちょっとっ!」  手の甲で目の横を何回も拭う。達也はそんな俺をなぜか微笑んで見返す。 「なにって、迎えにきたんだよ。約束したろ?」 「はあ?」 「昨日言ったろ? 明日昼飯一緒に食おうぜって」  全く記憶にない。 「聞いてないけど」 「呆然として耳に入ってなかったんだろ? ま、いいさ。行くぞ」  そのまま腰にぶっとい腕を回したまま、グイグイと歩いていく。 「ちょっと、鋏、メロンもまだ置きっぱ……って放せよ、ちょいっ!」 「ちゃんと休憩は取らないとな! 大丈夫だって一時間で帰してやるから」  達也はそう言うと、軽トラへ俺を押し込みドアをバンと閉めた。全く強引なやつだ。 「聖一は賭けに負けたんだから、俺の言うこと聞かなきゃな?」  ドア越しにニヤリと笑う。 「わかったよ。昼飯な。あ、財布家だわ。取ってくる」 「奢ってやるよ。当たり前だろ?」  達也はドアをバンバンと叩いて運転席へ乗り込み言った。 「自分の女には優しいぜ? 俺」 「冗談はもういいって」  ふぅ。と溜息を零しながら、俺はシートベルトを装着した。
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