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お祖母ちゃんの青春
大好きなお祖母ちゃんが死んだ。
八四歳、十分に生きたって、お母さんもお父さんも言っていた。
でも私は受け入れられないまま、四十九日も終わってしまった。
「美也、ぼさっとしてないで手伝ってよ!」
「分かってるよ」
お母さんのパキパキした声に、私はやる気のない声で答えた。
今日はお祖母ちゃんの家を整理しにきた。
まずはお祖父ちゃんの仏壇に手を合わせている。
お祖母ちゃんは、お祖父ちゃんの事が大好きだったらしい。よく、「こんなに素敵な人はいないのよ」って言って笑っていた。
私の中のお祖父ちゃんは、ちょっと気難しくて口下手で、苦手だったけれど。
私が覚えているお祖父ちゃんは、夕方の縁側に座っている背中だったりする。
なんにしても、私はお祖母ちゃんの家を片付け始めた。
担当は部屋の物を片付ける事。古い服とか、着物とか。お祖母ちゃん、物持ちだったんだな…
少し寂しくなって、薄ら涙がにじんできた。
そうして押し入れの中を出して、確かめていく。そこに、古いクッキーか何かの缶が出てきた。
古くて、少し蓋も歪んでいた。でも、とても大事そうだった。
恐る恐る中を開けてみる。そこに入っていたのは、古い日記帳だった。
――お祖母ちゃんのだ。
咄嗟に思って、手をかけて、一度止める。他人の日記を見るなんて、しちゃいけない。
でも、とても気になった。
気づいたら、私はその日記を開いていた。
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