まえがき   

1/1
526人が本棚に入れています
本棚に追加
/1136ページ

 まえがき   

 まえがき  徳川家十代将軍・徳川家治が将軍の地位に就いたのは、宝暦十年・九月二日の事であった。  英明な趣味人。そして愛妻家で知られた人物である。  その在位は二十六年を数え、まあまあ持った方。  このお話は、彼がまだ西の丸様と呼ばれた将軍世子であった頃、田沼意次の命を受けてお側に上がった奥女中、お絹の方が産んだ家治の姫君。  多寿姫さまの物語である。  多寿姫様は、多寿と書いて“たづ”とお呼び申し上げる。  幸多かれと願い、家治様によって名付けられた。  馥郁とした香り高いお名を頂きながら、お絹の方を生後間もなく亡くし、ご正室たる御台所には京都より親王家の倫子女王をいただき、ハッキリ言って邪魔者のお子として大名家に嫁に出された次第。  それでは皆さま、元気でやんちゃな姫の物語、どうぞご堪能あれ。
/1136ページ

最初のコメントを投稿しよう!