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「開門!」
ディーグの一声とともに、遥かに見上げる門扉が重い音を立てゆっくりと開かれた。
エィウルスは、驚くこともなく、辺りを見渡していた。
「どうだエィウルス、緊張してるか」
ディーグはいつも見せる人懐こい笑みをエィウルスに見せる。
「…緊張?あまりしていないな」
「本当かあ?」
その肩を叩いて、抱き寄せた。
「これから入団の儀式がある。普段は姿も見せない主が出るんだ、ちょっとは緊張しろ」
「ディーグ、お前は?」
「俺?なんで緊張すんの」
男達の声が響いた。
「人狼部隊が帰還したぞ!…噂では、新しい奴を連れ帰ったらしい」
「あー、それ、こいつこいつ。エィウルスってんだ。強ぇえから気をつけな」
エィウルスの肩を抱いたまま、指をさす。
「二つの心臓か?」
別方向からも声が上がる。
「そーだよー」
ディーグは、手を振って男たちに答えた。
「二つの心臓?」
エィウルスがそう聞き返すのを、ディーグは意外、と言わんばかりの表情でその顔を見返した。
「あれ、お前自分の身体のこと、知らねえの」
「心臓が二つあるのか、俺も、お前も」
「そうだ、それが、狼の姿になる原因…つったら変だな、狼に変化するためのもの、っていうのか」
「知らなかった」
エィルスは己の胸に手を当てた。だが、鼓動は一つだけ、響いていた。
「それから、この刺青、入団式に入れるものだから、覚悟しておけよ」
結構、痛いぜ。そう言って、ディーグは笑った。
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