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騎士団への入団式は、日が落ち、月光が微かに辺りを照らす頃始まった。
広い講堂に、揃いの外套を纏った男達が、静かに並びその時を待っていた。
エィウルスは、ディーグの後に続き、祭壇の前へと進んだ。
足元を照らす蝋燭以外に灯りはなく、頭巾を被った男達の顔を見ることはできなかった。
ふと、祭壇脇に造られた入り口に、微かな光が漏れた。
「主のお出ましだ」
小声でディーグが耳打ちする。エィウルスはそのゆらゆらと揺れる灯りに目を細めた。
現れたのは、細身の、華奢な体躯をした者が一人だった。
「これより、新たに我らが幻朧騎士団への志願を持つものへの誓いの改めを行う」
長い睫毛に縁取られた切れ長の美しい双眸。薄く小さな唇。どこから見ても女だが、発する声によって、かろうじて男なのだと分かった。
「子供…」
思わずエィウルスの口からこぼれた声に、ディーグは肩でその肩を小突いた。
「お前、入団の前に殺されるぞ」
ディーグはエィウルスを見たが、エィウルスは、突如現れた騎士団の主と名乗る少年を食い入いるように見ていた。
小さな唇が、微かに動いた。
「お前、名は?」
名を問われ、エィウルスは目を瞬かせた。
「エィウルス」
小さな頭を頷かせ、微かな笑みを浮かべた。少年とは思えぬ、妖艶な美貌。
「…エィウルス。お前は二つの心臓の者だと聞いた。その心臓、私に預けるか?」
「…ああ」
「そうか、ならば、お前に私の血と、騎士団の属である証をお前に授けよう。エィウルス」
深い青色をしたその双眸が、一瞬、金色に輝いたように見えた。
「エィウルス、お前に、永久の加護を」
入団の儀式が終わると直ぐ様、エィウルスは一人残され、代わる代わる様々な手により身体を探られた。
胸、腕の長さ、足の長さ、そしてついに首筋に刺青が施されるまでには、エィウルスはうんざりしていた。
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