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 翌日。  初の狩りに出ることになったエィウルスは、何者を狩るのか、初めて知らされた。  人間の大地を荒らし回っている吸血の一族の、その残党である。 「吸血?」 「そうだ。本来奴らは隣の大陸を支配している。だが、まれにこちらの大陸に忍び込んで荒らすものたちがいる」  ディーグは外套を羽織り、身支度を整えながら続けた。 「人間だけじゃない。…俺の故郷を奪った奴らさ」 「お前の、…故郷?」  手渡された真新しい外套を同じように羽織り、エィウルスは聞き返した。  ディーグの過去は、かつて出会った頃に少しだけ聞いたことがあった。  今の主に拾われ、狩りばかりさせられている。 「遠い昔の話だ。…俺がまだガキだった頃、吸血の奴らが村を襲い、子供だけを残し皆殺しにしやがった。残された子どもは囚われ、囲われ、どうなると思う」 「どう、とは?どうなるんだ」 「家畜さ。年老いて死ぬまで、飼われ、死なない程度に血を奪われ続ける」  ディーグの声音が低くなっていく。 「俺は、残された数人のガキの内の一人だった。そこへ、見ただろ?あのひょろっこい身体のあいつが、レグニスが、現れたんだ」 「レグニス?」  レグニス、と言われ誰かと思いめぐらせたが、騎士団の主であることはすぐにわかった。 「あいつは、すでに何人かの騎士を連れて、残党狩りをしていたんだ。吸血に襲われたという、人間の姿と、獣に変わる二つの心臓を持つ、人狼と呼ばれる俺たちを探していた、と、言っていたな」 「剣術や、証はレグニスから?」 「そうだ。あいつは身体こそひょろっこいが、剣術は恐ろしいほど強い。先に騎士団に入った奴らは、あいつに打ち負かされたのだと言っていた」 「信じがたいな」 「言ったろ?殺されるぞって」  あの細身の身体が、どのように剣を扱うのか、思案したところだった。 「出立だ、ディーグ、新入り」  屈強な男達が、次々に回廊へと出ていく。その背後について、エィウルスは、不意に気付いた。  ディーグが、一番若く見えることに。
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