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「諦めて」
その声は、満足そうに笑っていた。
俺の知っているどことなく遠慮がちな気弱な風情ではなく――どこまでも傲慢に。他者を支配することに慣れた視線が、俺を貫く。
俺は混乱したまま、その瞳を愕然と見返していた。
「あなたはぼくの為に選ばれた番(メス)なんだから……ね、先生」
幼さを十分に残した――当たり前だ。まだ、子供なのだから。
相手はつい最近まで、初等部だったのだ。年齢も体格も、俺と違い過ぎる。
そんな相手に、自身の尊厳を奪われようとしているなんて、どうしようもなく馬鹿げた話だ。羞恥と怒りと……隠しきれない絶望に、俺は怯えていた。それをどうにか表に出さないようにしているが、本能が……圧倒される。
彼がこの学園でも――いや、国内でも特別な血族の人間であることは、知っていた。
だがそれは、本当に知っていただけなのだと……今更ながら、痛感する。四肢の自由を奪っているのは、ほんの少し前に吹き付けられた薬物のせいだが、それ以上に、本能が彼に屈服しているのが自分でも嫌なほどに、わかる。子供相手に……怖いと、思う。
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