238人が本棚に入れています
本棚に追加
覚えてはいなかったが、気がつくと俺は自分の家で寝ていた。いつも引きっぱなしになっている万年床で、死んだように眠っていたのだ。
目が覚めて、アレが悪夢だったらどんなにイイかと思った。
けれども、身体に残っているたくさんの痕と、鈍い激痛が、昨日の出来事が夢ではなく、現実であることを俺に思い知らせる。
「…………」
俺は思いため息をついて、本気で転職してしまおうかと思った。
あの学校ほど給料のいいところはそうそうないだろうが、あんな悪魔がいる学校でのん気に働くことなど出来ない。
天花寺があんな鬼畜だと知っていたら、かわいがりなどしなかったのに、と。今まで彼に一目置き、かわいがっていた過去の自分が恨めしい限りである。
これから先、俺がβで天花寺がαである限り……同じ場所にいたら、逆らうことできずに……また、あいつの好きなように嬲られるのかもしれない。それは、嫌だ。
と、その時――
近くに転がってあったスマホがが、鳴動した。面倒だなと思いながらも携帯をとり、耳に当てた。表示には、知らない番号。嫌な予感を覚えながら、取る。
「………ハイ」
『あ、草薙先生?』
「………………………………」
電話の声の主は、天花寺春明だった。
最初のコメントを投稿しよう!