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また、βにはΩのように強い繁殖能力も――男でも妊娠ができるような機能もついていないために、同性に番として……求められることなど、滅多にない。番ではなく、肉体的な関係を持つ相手としても――決して、αの……しかも高貴な血族が求めるようなものではないのだ。絶対に。
βの両親の元へと生まれた俺は、そこら辺のβと一緒のように、ありきたりの人生を、それでも俺穏無事に過ごそうと……それだけを、願っていた。
それなのに、なんで……?
「先生……ぼくがαだって、知ってるでしょ?」
中等部に入ってすぐに行われた階位検査。
その結果を、副担任である俺は当然のように情報として得ている。その事実を、天花寺は知っているのだ。
色白の頬をわずかに興奮で赤く染めた小さな支配者の視線に、本能が屈服してしまっていた。支配級であるαに――しかも、その最上級とも呼ばれる高貴な血族である天花寺に、ただのβである俺が逆らえるわけもない。
「かわいい……先生」
小さな花のように唇が俺の頬へと押し付けられる。子供然とした微笑ましいはずの拙い口づけに、戦慄を覚える。自分が、生贄になったような恐怖に恥も外聞もなく、震えた。
「学校の相談室がハジメテの場所だなんて味気ないから、今日は味見だけ……ね?」
これが――始まりだった。
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