二章 変化するカラダ

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 確かにαと子供を産むことが可能なΩの間ならば、同性間でも恋愛は成り立つが、俺みたいなβは同性愛とはほぼ無縁な人生を送る。同じβでも、生まれつき異性よりも同性に魅かれる人種を否定するつもりはもちろんないけれども、俺は今まで同性を恋愛的な目でも、性的な目でも、見たことはない……と思う。  ハッキリ否定できないのは、異性にもそういった特別な感情をあまり持っていなかったからだ。学生時代は、周囲のノリと勢いに引っ張られる形で、それなりの関係を築き、それなりの体験はしている。けして、多いとは言い難いが。  しかし、自分のすべてを投げ打ってでも愛し抜きたいと思えるような相手とは、今まで付き合ってくれた彼女には悪いけれども、出会うことはできなかった。  教師になって、仕事の忙しさにかまけて彼女がいない時期が続いてはいたけれども、決して同性愛に興味があったとか、そちら方向に行こうとか、ましてや年下の……しかも生徒を相手にしようなんて、思ったことは一度もない。 「……ハァ」  つきたくなくとも、ため息が出て来る。  近くを元気よく歩いて行く生徒たちの姿が眩しすぎて、今の俺には目が溶けてしまいそうだ。  それに比べて、俺の周囲の空気の濁っていること…… 「今日の宿題やった?」 「もちろん」  全国でも有数のお坊ちゃま学校だけあって、生徒たちは誰もかれも、育ちの良さそうな雰囲気が子供の頃から出ている。昨日までの俺は、疑うことなく、純粋な目で生徒たちを見ていた。     
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