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どうやれば、アレをかわすことができるか、そればかりが頭を巡る。
結局、いい案は浮かばないままに、登校時間が来てしまったのだ。
長い廊下を、必要以上に遅い速度でノロノロと歩く。この廊下もまた、いつも綺麗にピカピカに磨き上げられている。この美しさは、生徒たちの清掃で維持しているわけではなく、専用のスタッフがいるのだ。定期的に、ワックスがけまでしている。ワックスをかけた後は、気をつけないと転んでしまうのだが……あくまでも、美しさにこだわっているようだ。
間隔を置いておかれている花瓶も、それにいけられている花も立派なものである。花瓶なんて、割ったら俺の給料などでも足りない品だろう。小市民の俺は、いつも廊下を通る時はできるだけ花瓶から身を離して歩いている。結果として、真ん中を歩くことが多い。
生徒たちはというと、割っても金で解決できる生徒たちが多い為に、さほど気にせずに廊下を普通に歩いているように見受けられる。羨ましいもんだ……
いつもはそんな皮肉めいたことは思わない。駄目だな。今日の俺は、やさぐれている。
ようやく職員室につき、安堵の息が口から洩れる。ここにくるだけで、やたらと緊張した。
いつどこで、あいつが現れるか警戒心ばかりが高まっている。
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