二章 変化するカラダ

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 教師にしておくには惜しい男前が、俺を見てニヤリと笑う。ちょっと悪そうな笑顔なのだが、この人はこういう笑い方が、非常によく似合う。パッと見て教師というよりも映画俳優とか、もう少し派手な格好をしたらホストなども似合いそうな人が、俺の受け持つクラスの担任教師である。俺よりも二つ上の先輩で、赴任して以降何かとお世話になっている人でもある。 「どうした草薙先生。顔色が悪いようだが?」 「……ちょっと寝不足で」  嘘はついていない。真実はそれだけではないけれども。余計なことを言うつもりはない。 「教師は身体が資本だっていつも言ってるだろ。悪ガキたちの相手を寝不足で相手にすると、お互いにいいことはないぞ。ちゃんと飯を食って、ちゃんと寝るのも教師の仕事なんだからよ」 「面目もありません」 「まあ、自己管理はきちんとしなさいよ草薙先生」 「はい……」  日笠先生の言うことはもっともだ。教師の俺が、体調不良などになったら、生徒たちに万が一のことがあった際に対処が遅れてしまうかもしれない。確かに俺は担任ではないけれども、だからといって、油断するわけにはいかない。気構えの問題だ。だとしたら、やはり天花寺の件は、どうにか決着をつけないとならない。我ながら、難儀な問題に巻き込まれたものである。  ……本当にあいつ、何を考えて、あんな…… 「あ、草薙先生。夏休み、予定何か入ってます?」 「いえ、特にないですけど。盆に実家に顔を出す程度です」     
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