四度目の恋

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四度目の恋

 月日は巡り、2人目の尊い命を授かった。  優しく笑い、元気に泣く女の子。  私は系列会社の正社員として採用された。妻も、産後は環境の良い職場に巡り会った。  私達家族4人は新たなスタートを切った。  仕事は忙しく、子育ても大変だ。大人になれば強くなるから、泣かない……。そう思っていたのに、大人になってからの方が泣きたいことは多かった。  でもその一つ一つの壁を乗り越える度、一つ一つ笑顔が増えていった。  ある日の帰り道、秋の青空。  私が笑いかけると、妻は少しだけ恥ずかしそうに頬を染めた。 「ありきたりだけどさ……。おじいちゃんとおばあちゃんになっても、手を繋いでいたいね。」  そう言って、俯きながら手を重ねてきた。優しく握られた手の温もりが伝わり、私の心は揺れていた。  妻の誕生日は来月なのだと、揺れている心のままそう思った。
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