冷たい瞳と熱いキス

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私はお風呂が好きだ。 特に浴室に本を持ち込んで、半身浴での読書タイムが。 日々の諸々のデトックスになっている。 もちろん、陸が先に浴室を出た後だけれど。 早い子は、小学1年生ならもう一人でお風呂に入るっていうけれど、陸はまだまだ一緒に入りたいらしい。 本が濡れないように念入りにタオルで手を拭いてから、念願の読書タイム。 今日も夢中になって20分程読んだところで、陸に割り込まれた。 「ママっ、電話!」 そう言って浴室の中まで子機を持ち込まれ、渡される。 「陸、先に電話に出て。」 その間にお風呂から出ようと思ったのに。 今度は目の前につき出される。 「もう出た。ママに代わってって。沙原コーチがっ!」 「ぅえっ?」 てっきり主人だと思っていたもんだから、コーチだと聞いてはびっくりして、「もしもし」というはずが、すっとんきょうな悲鳴になってしまった。 しかも陸。電話の通話のスピーカーのところ、押さえてないから、丸聞こえだ。 恥ずかしい。 そして気まずい…。 暫くの沈黙の後。 「ぶあっはっはっは。」 大爆笑が聞こえてきた。 「あの…。」 私の事はすっかり忘れてるのか、笑い倒している。 いいやもう、笑いたいだけ笑え! この人、こんな風に普通に笑ったりも出来るんだな、などと思ったりもして。 コーチはひとしきり笑ってようやく電話をする気になったらしい。 「なんなんですか、それは。」 「いや、あの…、すみません。」 「構いませんよ、久しぶりにこんなに笑いました。」 はあ、そうですか。 「ほんとに飽きさせない人ですね。」 ムッ。 「それで、今日は?」 「用がなければ電話してはいけないのでしょうか。」 そりゃそうでしょ。 あなた、サッカー教室のコーチなだけで、お友だちじゃないんだから。 何を言い出すのやら。 この間から、血迷ってませんか~。
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