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「残念。俺からの電話を貴女が待っているんじゃないかと思ってたんですが。」
だから、血迷いすぎ!
「昼間の事、弁解して欲しいんじゃないかと。」
はあ?
「何故でしょう?コーチが誰とどんなお付き合いをされようが、私には関係ありません。」
きっぱり、ここで線引きしとかなきゃ。
「へーえ。」
愛想のない低いトーン。
急に空気が変わった気がする。
沈黙が、重い。
「でも貴女、あれからずっと俺の事を考えていましたよね。」
それは疑問形ではなく断定。
「……。」
この人エスパーですか。
本音をつかれた科白に思わず言葉がつまる。
しまった。
沈黙は肯定しているようなものだ。
「そ、そんな事ない。」
慌てて取り繕っても怪しさが増すだけで。
「へーえ。」
再びの。
でも、さっきとはうって変わって空気が軽い。
「ところで、今日電話しているのは、来月の連休の試合の参加の是非を聞くためだったんですけど。河北さんは参加と聞いているから、これは再確認ですね。」
「再確認?」
今までそんな事あったかな?
「という口実ですね。」
クスッと忍び笑いが聞こえてくるよう。
「この間デートしようって約束したでしょう。明日、陸は学校ですよね?」
「そうですけど…。デートって。」
「もちろん勝負ですよ。貴女は勝つ自信があるんでしょう。」
ちっとも自分が負けるとは思っていない口ぶりで。
「明日、10時にこの間のショッピングモールのカフェに来て下さい。」
言いたいことだけ言うとさっさと電話を切られてしまう。
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