冷たい瞳と熱いキス

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沙原コーチは、私が嫌いなのかも。 とは言え、陸はコーチもそのサッカー教室も凄く気に入ってるから。 私は気にしないようにしている。 陸が眠りについた我が家はしんと静まり返る。 夏や秋なら虫の声、雨なら雨の降る音が嵐なら風の音が聞こえるが、何でもない今日は冷蔵庫のモーター音がやけに耳につく。 ピロ、ピロロロン? 電話が鳴る。 こんな時間なら主人だ。 「はい、もしもし。」 「おう、俺だ。どうだ、何が変わったことはないか?陸は?」 相変わらずの主人の言葉に苦笑い。 電話の向こうの主人には分かるはずもない。 「残念。今日はサッカー教室で大活躍だったらしくて、疲れたからもう寝るって。一時間も前に寝ちゃったわよ。」 「なんだ、そうか。」 明らかにつまらなさそうな声。 仕方ないな。 主人を気遣う主婦を演じてあげよう。 「それで、河北遥斗さんは、どんな1日だったの」 「おう、俺か。俺は相変わらずだ。今日も契約を一件とりつけて、さっきまでは接待だった。」 「…接待?」 特に深い意味はなく言葉尻を繰り返しただけだった。 「ん、ああ、取引先の、な。お嬢さんやら奥さんやら身内が集まって大変だったよ。」 急に取り繕うように話し出す。     
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