奇妙さ、それは奇妙だ

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「そう言って本当に邪魔をする人って、いませんよね」  そう言って、亀がにっこり笑う。笑うとウサギに似ている気がした。なんとなく、雰囲気が。 「ウサギとの勝負はどうですか」  僕は客人として振る舞われているのだから、客人になろうと決めた。世間話のように、話を振る。 「それよりもまず、座ってくださいな」  僕は言われた通りに、座る部分にウサギの刺繍がしてある一人掛けソファに座った。すかさず前に置いてあるウサギ足のローテーブルにコーヒーとカラムーチョが置かれた。  亀は大儀そうに座ると捲し立てるように話し始めた。 「いやー最高でしたよ。僕の勝ち。圧勝。いやーいいもんですよ、電動自転車というものは」 「それは良かった」 「一家をバーベキューにしてやりましたよ」 「美味しかったですか」 「ウサギはね。まあ、なんというか、ネコ以上に蛇以下って言うんですか。味なんて気にしてたら食べられませんよ」 「残ったウサギは」 「ポップコーンが飽きたので一緒に捨てました」 「それはそれは」  亀が座っている足を組みかえる。でも足が短すぎて、まったく組みかわってはいなかった。 「でもね。ウサギ。言うんですよ。俺は負けてないって」 「話を聞く分には、負けてるのに」     
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