奇妙さ、それは奇妙だ

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 なんだよ、随分と捻くれた奴だ。根性も歪んでいるんだろうな。そんな指摘を受けたこともある。担任の先生が我が家にまで押し掛けてきて、今後の学級方針なるものを両親に語りだした時にはさすがに頭が来た。 「僕はいじめられていません」  担任の先生は優しかった。もしも僕が本当に自他ともに認められる正真正銘のいじめられっ子だったとしたら、さぞ、喜んだことだろう。でも今は状況が違う。僕はいじめられていない。先生の優しさは分かる。ただ、今の時点ではそれはただのおせっかいなのだ。それも相当悪質な。  だって考えてみてほしい。まるでいじめられていないのに、「君はいじめを受けているんだね」と、烙印を押されてしまう気持ちを。悪いことをしていないと声高に叫んでいるのにお前が犯人だと指を突きつけられる。そんな悪夢に似ているのではないか。身の覚えのない苦しみへの優しさなんて、迷惑以外の何物でもない。  ここで僕の学校生活を紹介したい。まず登校して、ごみ箱から内履きを取りだす。その時、靴の中に毛虫やら画鋲やらが潜んでいないかを確認する。それから自分の教室に向かう。するとだいたい、僕の席である机の上には、縁の欠けた花瓶に、そこらで拾ってきたであろう、名前も分からない貧相な花がポツンと挿されている。     
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