奇妙さ、それは奇妙だ

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 と、ここまで自分がいかにいじめられっ子ではないことを語ってきたわけではあるけれど、僕が話したいのは、みんなに聞いて欲しいのは、ここからだ。全ては前置き、と言ってしまったら身も蓋もないけれど、でも、僕の考えについては知っていてほしかった。僕の認識をみんなに分かって欲しかったのだ。  それはある帰り道。夕焼けのオレンジで世界を染めあげてやろうかと、夕日が目論んでいた頃。  学校から家までの帰り道で、僕は三回、信号を渡る。その、二回目の信号にさしかかった時だ。  信号は赤だった。色に従い立ち止まる。信号を待っている時は、その歩行者信号を見ている事が多い。じっと見ているわけではない。なんとはなしに、という感じだ。  だから妙な感じがしたのは、立ち止まってからだいぶ経ってからだろう。  そこは十字路だ。いつもは車通りが多く、信号が青になっても思わず左右確認をしてしまうくらいの、車の多さ。無茶な運転をしている人もいるので、何度かひやっとした経験もある。日常茶飯事とまではいかないまでも、信号無視を見かけたのも一度や二度ではない。  そんな十字路。賑わう十字路。それなのに、今は車一台通っていない。  もっと不自然な事がある。更に周囲を見渡して気付いた事。僕以外の人がいない。確か僕の隣にはランドセルを背負った低学年と思しき女の子がいたはずなのに。その確かが不確かとなって、今のこの光景の不信感を押し上げる。  車一台通らない。人が一人もいない。     
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