奇妙さ、それは奇妙だ

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 そんな不可解の連続の中で、ダメ押しのように、もう一つ不可解がやってくる。  信号が変わっていない。赤のままなのだ。試しに頭の中で数を数えながら信号を見てみる。五分経っても変わらない。あまりの不審さに頭の中で小さな爆発が起きていたので、視線は変わらずそのまま。それによってなんと、十分以上、僕は信号とにらめっこをしていた。それなのに、色が変わることは一度も無かった。赤は赤、とそれが当然であるように、警戒色だけが点り続けている。  頭の中の小さな爆発が終わって、ようやく事態を冷静に見られるようになった。しかし、見られるようになったところで何も変わらない。信号は赤のまま。車は通らないまま。人はいないまま。  信号無視をしてみようかな。  ふと、僕の中で悪魔のような考えが浮かんだ。それは、恐ろしいことだ。犬畜生だけが行うような、下等生物であると自ら宣言するような、それは恥ずべきこと。やってはいけないこと。それが、信号無視。  僕は真面目だ。それは自分でも分かっている。学校の規則は一度も破ったことはないし、小学校での皆勤賞は、中学生の今になっても続いている。そう、僕は真面目。だから今からやることは、十年とちょっと生きて来た僕の人生の中での、初めての過ちなのだ。     
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