奇妙さ、それは奇妙だ

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 右足を踏み出す。水族館みたいに周囲がガラス張りになって、三百六十度見渡せる景色では、魚が三匹、ヒップホップを踊っていた。  左足を踏み出す。さながら映画のスクリーンのような暗幕が僕の目の前に現れて、その幕が上がる。幕が上がるとそこがステージだと分かる。ステージでは四匹のカバと六匹のペンギンが、川柳を詠んでいた。 「ロビンソン 吹き抜ける風に 秋感じ」 「火曜日は 水浸しだけど 金曜日」 「童話みたい 堂々巡りの どう私」  僕はものすごく走り出したい衝動に駆られたけれど、すんでのところで止めた。もし走ってしまったら、あまりにしっちゃかめっちゃかな世界の中で、僕もその住人の一部になってしまうのではと思ったからだ。そう、住人の一人、じゃなくて、一部、に。  思い切って歩みを止める。そうすると目の前に扉が現れた。扉のドアノブに手を触れてみると、扉は家の一部になった。縦に細長い、黄色い扉の、家。  ノブを捻る。鍵は掛かっていない。僕はゆっくり、扉を開ける。 「一緒にコーヒーはいかがですか。もちろん、ハッピーターンもありますよ」  出迎えてくれたのは亀だった。二足歩行の亀。頭には麦わら帽子を被っている。 「ようこそ我が家へ。ほら、どうぞどうぞ」  僕は言われるままに亀の家にお邪魔した。 「お邪魔します」     
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