魔法の効力と法則

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 突拍子もない話だが、それが本当であれば良いと、バカな希望を持ってしまったりもした。  その瞬間だけ、握られた心が開放される様な感覚を覚えた。 「解ったよ、ユーマ。つまり、君は魔法使いなんだね、そして、僕に魔法をかける事ができるわけだ」 「何度も言っただろ、ヒキコモリの杜夫(もりお)クン、そうとしか言っていないぞ。ほら、童貞のまま三十歳になると魔法が使えるようになるって聞いた事あるだろ? アレって全員じゃないけど、ほんとに魔法使いになったやつがいるんだよ。実は結構な人数なんだけど――心がきれいで、三十歳で童貞で、掃除好きな男には、神様が現れて、魔法を授けてくれるらしい」 (ヒキコモリは余計だろ! ……まあ、そうなんだけれど) 「掃除好きって何か関係が有るの? 胡散臭いなぁ」 「うるさいな、知らないよ、聞いたままを言っているだけなんだから――とにかく、その中で特殊な魔法を持った人がいたんだ。人を魔法使いにできるという魔法を持った人がね。その人が、僕が東京で会って来た人なんだ。ともかく、僕はその人に出会った。そして選択するように言われた」  冷徹の金狼(きんろう)と称されるほどの北司(ほうし)伊馬(いうま)が、いつに無く熱く語っている。ちょっと面白い。  もちろん、僕は金狼などと呼んだ事は無い。伊馬と言う名前は読みにくいので、ユーマと呼んでいる。  それどころか、ユーマからしたら、嫌な呼び名かもしれない。彼の金髪は親譲りの美しいブロンドだ……彼は父親を嫌っているようだから。 「魔法使いに、ユーマが選択を迫られたわけね、それが、『魔法をかけられる側』か、『魔法使いになるか』だね」
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