魔法の効力と法則

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「ひとつだけ注釈を入れておく。間違えやすい事だけど、自分の思い通りの人間に変身出来るわけじゃない。あくまでも、出会ったその相手が求める人間に変身すると言う事なんだ」 「解ってるけど、何か違いがあるのかい? 相手の考えている事を読む力は無いんだから、自分の思い通りの人間に変身しても、相手の好みかどうかはわからないじゃないか。相手の好みに合わせてくれる方が都合が良いんじゃないの?」 「……で、どうする。君は魔法を掛けられる側、魔法をかける側、どちらを選ぶ?」 「どちらも選ばないって言うのもありなのかい?」  ちょっとからかって見せたつもりだったが、ユーマは特段に顔を曇らせた。しまったと思った。 「やっぱり信じてないんだな。さっきまで、一生魔法にかかっていたい、誰だってみんなに好かれたいと言っていたじゃないか。俺は杜夫を信じて話したのに、杜夫は俺を信じていない。もうこの話はやめよう……言ったろ? 信じてくれなければ、意味のない話なんだ。今後、俺はこの話を絶対にしない。杜夫は聞いた話は忘れてくれ。もっとも、俺を頭がおかしい奴だと言いふらしたいならそれでも良い」  まさか、こんな反応が返ってくるとは思わなかった。ユーマは――本気なのだ。 「信じているよ、信じているさ」  まるで、自分に言い聞かせている様だ。信じなきゃ、僕にとっての唯一の光を失うぞと、ユーマの手を握りながら必死に伝えた。 「でも、いきなり魔法使いになるか、魔法を掛けられるかと言う話になったら、誰だって悩むだろ。そうさ、こんなに決意に時間がかかるぐらい、僕は重要な事だと思っているんだ、ユーマを信じているからこそだよ。だから、少し時間をくれないか」  失いかけた光が、また輝きを取り戻した。とっさに出た言葉にしては上出来だ。ユーマは、それもそうか、と、あっさり納得して、こう言って部屋を出て行った。 「三日後にまた来る。その時までに決めておいてくれ」
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