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許されない、恋をした。
決して許されない、恋を。
私は自分の醜い身体を包んでいる、この純白のサテンで出来たウェディングドレスを見下ろしていた。
「ついに、ここまで来てしまったのね」
ぽつりと落とした自分の言葉にどれほどの覚悟が潜んでいるのだろう。
自分自身のことなのに、私はやっぱり分からなくて、少しだけ苦笑う。
この選択が果たして正しいものだったのか。
いいや、正しい、という表現自体がそもそも間違いなのだ。
大切なことは、私たちが愛し合っていること。
そして、彼が幸せであるということ。
私はその二つの事実をもう一度再確認した。
決して、忘れてしまわぬように。
決して、見失うことのないように。
そんなことを思いながら、私は視線を空に泳がせた。
瞳を閉じれば、自分が今までにおかしてきた過ちが、罪が、荒波のように押し寄せてはまた、記憶の彼方に遠ざかっていく。
ふわり、と何かが私の肩にとまった気がしたから、私はゆっくりと瞼を開けて、自らの肩口を向いた。
私はそこにいる白い小鳥の瞳を見据えて、
「……ねぇ、本当にこれでよかったのかしら」
小鳥は、何を今更、と呆れたような顔をしたかと思うと、青い空へ向かって力強く羽ばたいていった。
その後ろ姿は、憎々しいほどに自由だった。
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