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「でも、私は魔女なのよ? いつも黒い服を着て、いつも村の皆にも煙たがられていて」
声が、震えた。
これ以上先を言ったら、嫌われてしまうかもしれない。
でも、彼が優しく相槌を打っているから、私は息を吸い込んで、言葉を発する。
「そ、れに……私のせいで沢山の人たちが死んだの。……私に、近付いたせいで……」
彼は俯いてしまった私を優しく抱き寄せると、
「知ってるよ。それでも、きみがいいのだから、どうしようもないさ」
困ったように笑うのだった。
私は生まれて初めて、嬉しくて涙を流した。
彼はゆっくりと私を抱きしめていた腕を下ろして、私を解放する。
柔和に細められた彼の瞳の中には、恐れ多い魔女なんていなかった。
ただ、泣き虫な女の子だけが存在していた。
彼は私を大木の下に連れていくと、その根元に置いてあった白詰草の花冠を私の頭にふんわりと乗せた。
その瞬間、今までの世界は私の中で終わりを告げた。
花は咲き誇り、蝶は舞い、世界は色を取り戻し始めた。
涙で歪んだ空の彼方に、先ほどの白い小鳥が飛んでいるのが見えた気がした。
少しの絶望さえも吹き飛ばしてしまうような、堅い決意と自由を謳歌する鳴き声を響かせて。
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