第3章 夫と妻

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6時に目覚めた晴馬はお腹が空いたというから、朝食前から甘いケーキを二人で食べた。 晴馬はチーズケーキが大好きだから、私が食べさせてあげるとうっとりした顔で、 「美味い・・・幸せ・・・」と、実感の籠った感想を伝えてくれる。 「夏鈴の顔見ながら、大好物食わせてもらって、夢みたい」 「夢じゃないよ? 私はここにいるし、晴馬は怪我なく元気。 不幸中の幸いってまさにこのことだね」 「俺、夏鈴と一緒になって何度命拾いしてるんだろ?」 「・・・大袈裟だよ」 「いや・・・。本気で、そう思ってる」 朝食が運ばれてきて、私は売店でおにぎりを買ってきて一緒に食べた。 個室の入口に設置されたトイレに行くとき、普通に歩けることに感動した晴馬は嬉しそう。背の高い彼の脚が、病院着の裾から勢いよく前後するのを見ているとやっと安心する。 9時に担当医が来て、クビを痛めている以外に異常はないと診断してくれた。経過に注意と言われ、退院の手続きをする。 ディーラーの営業さんが代車を届けてくれた。免許取り立ての私が運転して、家路に着いた。 今日は晴馬も私も仕事を休んだ。連絡すると驚かれて、無事でよかったと言ってくれて・・・。事故現場を通過すると、跡形もなくて不思議な気分になる。
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