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痛みと衝撃に、私は一瞬息ができなくなった。
激痛に意識が遠のき、腹を抑えて蹲る。
昨日までの傷が蘇り、炎のように熱くなり、全身の神経が痛みに痺れる。
それでも、彼からの攻撃が止むことはなかった。
「旦那の鞄を落とすとはどういうことだ? 鞄を持つこともできねえのか?」
肩に足をかけられ、踏みつけるようにして床に倒される。
そして間髪入れずに、その足は私の腹を襲った。
「落としたかと思えば拾うこともしねえ。それが妻の態度か? あ?」
腹を守っている手に、何度も鋭い蹴りが叩き込まれる。
先ほどは何の痛みも感じなかった手が、いっそ切り落としてほしいと思うほどに痛かった。
最後に一度、骨が折れてしまうのではないかと感じるような蹴りが私の手に入り、嵐のような暴力はそこで止んだ。
「犯罪者が」
そう吐き捨て、床に転がる鞄をそのままに、彼は静かに自室へと入っていった。
私は鞄とともに倒れたまま浅い呼吸を繰り返し、白い膜が張ったような頭で、ただ一つのことだけを考えた。
立ち上がらなければ。
彼が部屋から出る前に食事の支度を済ませなければ。
朦朧とした意識の中、私はふらりと立ち上がり、鞄を持ってキッチンへと足を進めた。
醜く歪んだフランスパンが、ゴミ箱に影を落としていた。
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