回想-始まり-

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そして父は逮捕され、私たち家族の地獄の日々が始まった。 道を歩けば後ろ指をさされ、小学校では「人殺し」というあだ名がつけられ、物がなくなったり給食を減らされたりと、典型的な嫌がらせをされた。 教師も私に近寄ろうとはせず、いじめを黙認していた。 母はパート先で陰口を叩かれ、暗にクビを宣告された。 私と母は引っ越したが、父の事件は全国ニュースで流れていたため、状況はほとんど変わらなかった。 母は雇ってもらえず、収入はゼロ。 父の貯金はあるが、いつ底をついてもおかしくないほど小さな額だった。 そして、私のいじめは相変わらず。 むしろ、見知らぬ赤の他人であるせいか、やり口は前の学校よりもエスカレートしていた。 やっと母の働き口が見つかった頃、父は上司を殺したことによる精神的ストレスで獄中で自殺した。 髭を剃るためのカミソリで、何度も何度も手首を掻いての自殺だった。 父の葬儀は、私と母の二人だけでひっそりと行った。
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