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 はたちになったら一人暮らしをしていいよって言われてたから、春を待たずに大学の短い冬休みを使って引っ越しをした。家族も実家も好きだけどやっぱり憧れはあった、少なくとも実家暮らしよりは一人暮らしのほうがモテるし。俺だって彼女欲しい。家でいちゃいちゃしたりしたい。彼女に起こしてもらって一緒に登校して授業に出たりしたい。  大学から二駅、自転車で通えないこともない。商業施設よりも家の割合が高いような静かな街の駅から徒歩八分。二階の角部屋ワンルーム八.五畳、それがとりあえず手に入れた俺の城だった。風呂トイレ別だし部屋ん中に洗濯機置き場もあるし、条件の割にはなんかやたらと安かったもんだからお姉ちゃんは「幽霊でも出るんじゃないの」って冷やかしてきた。敷金礼金家具家電の足しのために俺はこの二年バイトを結構がんばったし、心証を落とさないように単位だってギリギリ落としてない。実家のほうが楽だからーってダラダラしてるお姉ちゃんとは違う。言ってろ!と威勢よく飛び出してきてそれなりに片付いた頃。レポートとかテストとか二年生の後期が終わってバイトとサークルしかないながーい春休みに突入した頃。
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