0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
「ありがとね高山くん、残業代はちゃんとつけとくから!」
「それほんとよろしくお願いしますよー、おつかれさまーしたー」
バイト先がある駅の路線のひとつが人身事故で止まった。それで運転再開待ちの人たちがどやどや来て店がはちゃめちゃ混んで残業になった。携帯の時計を見たら楽しみにしてた好きな映画の地上波初放送はもう半分くらい終わった頃で、どうせ間に合うだろうと思って録画してこなかったのを後悔した。あーもーやっぱDVD借りるか買うかしろってことなのかなあ、と思いながらだるだると階段を上がって、部屋のドアを開ける。
「……ん?」
部屋の電気がついている。え、俺、今日、つけっぱでバイト行った?いやいや、今日天気よかったし昼間は電気つけてなかった、まだ明るいうちに出かけたはずだしそもそも、え、誰かいる?なんか音もする、気がする、泥棒!?強盗!?とりあえず靴箱に引っ掛けていたビニール傘を持った。靴を脱ぐ。殺られる前に殺れ、だ。
「!?」
一つしかない部屋のドアを開けようとしたら電気が消えた。やばい。向こうも殺る気だ。顔を見られたらやばいもんな。何か言ったほうがいいのかなとも思ったけどとりあえず防御、からの、攻撃、ってことで、ビニール傘で頭をガードしながらドアを開け、た、ら。
「へ」
……誰も、いない?
テレビがついてて、部屋が暗くて、あれ、これ、もしかして電球が切れたとか、そういう感じ?いやでもここで後ろから殴られて、とか、見たことある、振り返る、いない。ビニール傘を持ってる俺しかいない。
「……なあんだ」
消したと思ってたけどつけっぱで出ちゃったんだろうなあ。電球、どうやって替えるんだろう。傘を玄関を戻そうとしてよたよたと電気のスイッチを押した。いやいや点かないから、と思ったらばっちり。
「……いやいやいや!?」
しかも部屋のテーブルの上になんでかビールがあるし(たぶんうちで飲んだときに誰かが置いてったやつだ、俺はハイボール派なので)、まったく記憶にない豆腐のなんかおつまみがあるし、ここは俺の家か!?本当に!?
最初のコメントを投稿しよう!